ワイヤレスイヤホン製品のいくつかに上記のようなマークが付いていることがある。このマークは英国CSR社が開発したaptX(アプトエックスもしくはエーピーティーエックスと読む)という無線コーデック技術に対応している製品に付されているマークだ。
このマークが付いている製品は一般的なほかのBluetooth音響機器より音質面で優れた通信を体感することができる。
今回はこのaptXのすごさについて解説する。
【1】aptXはどこがすごいの?
aptXはBluetoothで使われるほかのコーデックと異なり、音質を劣化させないことを謳っている。
細かい技術的解説は割愛するが、ふつう音楽を無線で飛ばす場合、データ量を節約するために音質を一定程度間引きする。
人が音を聞くときは必ずしも音に含まれる全ての音域を聞いているわけではなく、また人間には可聴できる範囲がある。可聴外の音など人間の耳では認識されにくい音を間引きすることで効率的に音楽を調整することで無線で飛ばしやすくするのだ。
一方aptXは別のアプローチをしている。
データをとことん細かくして細切りにすることで、本来の音の情報をほとんど維持しながら無線で飛ばすことを可能にしている。
このことでaptXでコーデックされた音楽にほぼ音質劣化はなく、しかも無線通信にありがちな通信遅延も克服するという利点も確認された。
aptXは音も美しいまま、しかも音声がリアルタイムに近く聞こえてくる夢のコーデック技術と言って良い。これは音楽だけなく動画を見るときにも効果を発揮する。映画で俳優の喋っている映像と台詞の音声がずれていたら、せっかくの迫力ある映画も台無しだ。
【2】でも弱点あるんでしょ?
もちろん弱点はある。
まずaptXコーデックを利用するためにはスマホなどの音源とイヤホンなどの音響機器が両方ともaptXに対応している必要がある。aptX対応でない音響機器から音楽を再生する際はaptX対応かどうかを気にする必要はないし、わざわざaptX対応品を買っても効果はない。
またこれはあくまで個人的経験からくる結論だが、aptX対応イヤホンはaptXモードで動作させないとかなり音質が悪く感じられるものが多い気がする。とくに低価格帯のaptXイヤホンはaptXを利用しないでBluetoothのみでつなぐとノイズなどが多めに感じることも多い。
ただこれについては個々のイヤホンの特性の問題もあり、一概に言えない。
同様に、aptXに対応しているからといって、再生するイヤホンの性能が良くなければやはり音はよくない。これも個人的経験だが、aptX非対応でもaptXモードのaptX対応品より音質面で優れていると感じられる製品はあるし、人間の聞こえ方の問題もあるので一概にaptX対応品だから優れていると感じられるわけではない。
ただ個人的経験から言えば、通信遅延に対してはaptXの効果はかなり高いように思われる。