おすすめ度*1 |
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SONYの低音重視シリーズ「EXTRA BASS」の低価格モデル。この価格帯では圧倒的ともいえるほどの低音の量感が特徴。遮音性は良好で没入感が高いが、音漏れは多め。
【1】外観・インターフェース・付属品
イヤーピースの替えとキャリングポーチが付属する。平形ケーブルのタッチノイズは少なめ。
【2】音質
低音の量感、音圧が圧倒的。その奔流の中に案外きれいでほどよい精彩のある中高域が聞こえてくる。低域支配が強いが、中高域が必ずしも潰されている感じはなく、存在感はある。
[高音]:肉厚さと透明感のバランスのある音で自然な方向の味付け。突き抜け感もそこそこある(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:ピアノに鮮やかさがある。
[低音]:迫力は圧倒的でブーミー。100hz~50hzまでしっかりした厚みのある振動を鳴らす。40hzからは沈むというより重たい感じで量感が失われない。かなり深掘り感も出る(分島花音「killy killy JOKER」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:低域が近く広く支配する。
[パーカッション・リズム]:圧倒的量感のドラム優位。弾ける音は重く、粘っこく感じる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:低域の上に気持ちよく乗って一体感がある。低域の展開に素直に誘導されていく感じがある。
【3】官能性
joy「アイオライト」はドラムが地熱を帯びたマグマのようにエネルギッシュ。重たくブーミーだが熱量を音場全体に与えていて迫力がある。一方でそのブーミーさに潰れない緻密さが中高域にも感じられ、それなりに面白みを感じる表現で圧倒される表現力がある。
Claris「ルミナス」は低域がしっかりと作り上げた足場の上にストリングスが広さと奥行きを表現する。高域ボーカルの突き抜け感も失われておらず、暗くならずに明るく飛翔していく感じが出ていて、クライマックスでは低域の圧倒的量感から解放されて高みを目指そうとする美しさを感じる。
nano.RIPE「ツマビクヒトリ」ではドラムが生命的で力強く、音の抜けと立ち上がりがよくメリハリ感が明確で気持ちよくかっこいい表現になっている。ボーカルも力強く透明感があり、ブーミーで広く移動するドラムに負けずに対比感が出ていて楽しい。ギター音は弱めに思うが、ベースが強い個性を発揮する。全体として肉厚で迫力があり、量感のある演出が圧倒的。
奥華子「変わらないもの」はピアノに精彩感があり、低域はしっかりと安定を音場に与える。その穏やかで地に足が付いた音楽空間をボーカルだけが高く伸びやかに突き抜けていく。ところどころ量感のある重い低音が心を揺さぶり、情感たっぷりで感動的な味付けになっている。
【4】総評
低音の量感は圧倒的で低価格モデルは随一とも言える。一方で中高域にもなかなかの精彩があり、決して低音に流される展開だけではない。低域が支配的であるが、だから低域だけがよいというのではなく、中高域の表現力あっての低域の活躍といえる。そのため高域ボーカルの曲も低域に引っ張られて暗くなったり太くなったりすることが少なく、女性ボーカルも明るさを維持して聞こえてくる。
これはなかなかにおすすめできる製品に思う。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。