おすすめ度*1 |
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折りたたみ可能なヘッドセット。首掛けとしても音は聞こえるほどで音漏れはやや多め。遮音性はそこそこ。
長時間装着でやや蒸れる。
【1】外観・インターフェース・付属品
付属品は特にない。ナイロン編み込みのケーブルにタッチノイズはない。
【2】音質
珍しい中域重視のかまぼこ型のような音。低域は下の方で重みを加えるが目立たず、高域は弱い。若干歪み、音が割れやすい場面もある。中域とボーカルがかなり前面に出てきて、低域が奥まる味付けだ。そのためロックサウンドではとくにギターの精彩と密度が感じられて気持ちよい。
[高音]:天井感があり、突き抜け感はあまりない。ボーカルは行ってこいな表現に聞こえやすい。高域金管吹き鳴らしは細く、力強さはそれほどない(分島花音「RIGHT LIGHT RISE」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:全体的にボーカルのすぐ後ろと左右を囲み、密度を作る。全体的にツルっとした音だが、ピアノがとくになめらかに聞こえる。
[低音]:100hz~60hzまでブーミーな音。70hzにピークがある。50hzから沈み、30hz以下はほぼ振動も感じられず、かなりおとなしい。低域が奥まりがちなので、低域優位の曲でも比較的中域が楽しみやすい(分島花音「killy killy JOKER」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:左右は張り出す感じよりは奥まる遠い感じがあるボーカルが一番手前に陣取り、錐行の陣形でボーカルが先鋒となって楽器を率いて突っ込んでくるような表現(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:全体的になめらか。高域は行ってこいになりやすい。
【3】官能性
奥華子「変わらないもの」はツルッとしたピアノの音が聞きやすく、ストリングスの広さの表現も明確。ボーカルも聞きやすい丸みのある感じだが、若干割れやすい。ただ温度感や息感はあまりなく、生命的というよりは、加工物的、ゆでたまごのようなツルツル感に思える。
UVERWorld「CORE PRIDE」は通常低域ドラムが支配的な曲だが、このヘッドセットだと低域は比較的おとなしめで、ギターや広さを表現するキーボードが鳴るので全体としてバランスが良くなっている。だがそれにもまして魅力的に表現されるのはボーカル。丸みがあってなめらかに聞こえてくる声は抵抗するところなく身体になじんでくる。
petit milady「azurite」は側面でやや歪んでガチャガチャと割れるところがあるが、全体としてなめらか。低域が奥まるのが高さを感じやすい味付けになっていて、曲調の飛翔感がよく出ている気がする。ただボーカルは全体的に中域に強く引きつけられる傾向にあり、高域方向は遠くなり、行ってこい。だがそれがいわゆる高空での風当たりの強さを感じさせるので案外味が出ているのは面白い。
早見沙織&東山奈央「Hello Alone」は楽器音が密度強くそれこそ洪水状態でややボーカルは押されがち。楽器音がボーカルを押しのけて飛び出そうとしているのをボーカルが踏ん張って押しとどめているような表現だ。これは密度が強く出過ぎな気がする。
【4】総評
ボーカルは案外なめらかで聞きやすく、中域の密度感はなかなかよい。曲によってはボーカルが先陣を切って楽器を引き連れて突撃してくる感じに気持ちよく迫ってくる。一方でクラブミュージック系で中域の密度が高いとそれに押されて、ボーカルが倒れ込みそうなほど前屈みに聞こえることも。低域が強いロックサウンドなどでは低域が比較的おとなしくなるのでバランスが取れる感じに聞こえる。高域は基本的に遠く細い。
経年使用はしていないのでわからないが、エイジングで低域が少し鳴り出してくるようだ。傾向は一貫しているが、テスト中徐々に低域の聞こえが全体的によくなった。
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。